■第24回中小AG会合 [2023/8/30(水)]

●議題:
議事 ビデオ
(1)開会挨拶 松島主査

(2)前回 (株)樋口製作所様の取組みについての振り返り

 

(3)IBUKI様の取組みご紹介  (株)IBUKI 業務改革チーム チームリーダー 林 孝之様

<意見交換>IBUKI様の取組みについて

 

(4)まとめ 松島主査     

 出席者:
 (株)IBUKI 林様
 松島主査、大川副主査 永森様、今野様、林様、兼子様、三田村様、

 橋向様、志村様、阿部様、石井様、大久保様、小松様、斎藤様、澤田様

 長戸様、水上様 事務局:中島 熊谷

(1)開会挨拶 

 松島先生 挨拶

 ・新しい形での「ゆっくり意見交換できるスタイル」での会合を楽しみにしている。
 ・現状は、現場と政策が離れてしまう懸念があり、それをつないでいくことも私たちの役目である。
  私たちが咀嚼しながら、中小企業に広めていくことが必要である。
 ・IoT等への取組の中で私たちが実践してきたことを、さらに進めていこう

(2)前回、樋口製作所様の取組みの振り返り

 委員の皆様からのご意見 

 ・共感できることは、現場視点で進めていること。
  自社開発のスピード感が活きている、改善をしつつその改善をふまえた 業務システムを開発し、社内連携がとれている。
  自社開発の人材(現場とITが分かる)育成、そのような人材が活躍できる会社でありたい。

 ・めざすところは武州も同じ、30年やっているが樋口さんに追いついていない。
  4年間でここまで紙からシステムに脱却できたことが、本当に素晴らしい。
  だが少しずつ、樋口さんのような形でがんばりたく励みになる。現場の意見を聞いてやったことが、いちばんであると思う。

 ・短期間でこれだけのコンテンツ立ち上げ・推進等進めたのが凄い。この秋に見学を申し入れており、現地で秘訣を伺ってくる。
  うまく現場の声をすいあげ、外部のIT業者さんとの「つなぎ役」になるブリッジエンジニアリングを育成できたことが素晴らしい。

(4)(株)IBUKI様の取組みについて
   金型屋のデジタル化推進 ~データの5Sから工場の見える化~

  ・事業
   創業90年、従業員66名、事業内容は射出成型金型の設計・製造等。
   現在は山形に本拠地を置き、富山にも拠点あり。
   以前は90%以上家電関係であったが、現在は車両関係が多い。
   金型だけでなく、自社開発としてビアグラス(ガラスを超える薄くて割れない素材)を出している。

  ・課題
   情報の点在(エクセルで個人持ちになりがち)、せっかくの情報が活用されていない点が問題であった。
   その他、クラウド化等も取り組まなくてはいけなかった。
  ・導入課題
   進め方 :社長より方針説明、工場全体への周知→意識合わせ/理解、業務の洗い出し(5S)の順で進めた。
      工場の現場をどれだけ理解できているかを確認し,そして現場のニーズと必要性がずれるケースに着目した。
             例)  手に油がついているので、タブレット操作等はできない。
      目的の明確化にしてすすめた(デジタル化自体が目的ではない)。

  ・5Sの大切さ
     以前の作業場は器具等が散乱していた、現在は整理整頓が徹底している。
     情報の5Sも同様に捉え、情報の選別・書類の保管ルール・正確な情報の入力・システム使用確認のルール付けが重要であり、
     社内の帳票のフロー分析、現在の帳票と業務・作業工数との突合せによりデジタル化率91.2%、自動/半自動化率43.2%を達成している。 
 ・デジタル化人材の変化
     2017年から林リーダーが未経験からはじめた、1名の経験者と1名の新卒者をいれながらチームとして進めてきた。

  【番外編】
   デジタル化推進のために、システム名とロゴを考えた 「DenDenmushi」 
   愛着を持ってシステムを使ってもらうため。

 ・勉強会
  エクセルとパワーポイントのPC操作勉強会を実施。
     進め方:開発の歩み「慣れよう、知ろう、使おう、集めよう、共有と活用」とした。
                 匠のいる現場ではデジタルオンリーにならないように配慮した。

 ・システム開発の取組の歴史
     業務の見える化、作業効率アップ。
     勤怠管理、5Sパトロールシステム、電子マニュアル(技術伝承)。
  見積支援システム、知見集約システム。
   IoT金型(センサー内蔵)→良品と不良品の判定。

 ・情報の集約と一本化
     基幹システム:これまで使用してきた帳票情報を一元的に管理できる。
     これまで使っていたエクセルをそのまま活用、そのエクセルを保存するとデータベースに情報が集約される。
     紙だったものはシステムに変えた(例:日報)。
     すべてのデータが共有されることで、会社の状況や社員の出張状況等すぐに確認出来るようになった。

 ・負荷工数の見える化
  稼働状況、経営数値などの見える化および負荷予測をおこなった(正常:青→状況悪化:紫)。
  例:工程ごとの業務負荷予測→残業時間予測、不具合状況まとめ→不具合抑制。 
  加工機ごとの加工状況:加工ログ取得によりリアルタイムで確認できた。

・まとめ
 小さな成功体験が次のステップにつながる
 帳票やデータの5Sを実施して、無駄や手戻りを明確にする
 現状を把握して課題を明確にする
 現場とのコミュニケーションを大事に意見を反映する
 小さな課題解決、社内展開から実施し効果を実感させる

 

     
     
   

 

<意見交換>

  ・感想としては、改めて「製造業のデジタル化」として一番大切なのが
     5Sなどのデジタル化以前のものであることを感じた。IT化がうまくいかない場合、
     それ以前ができていないからだろう と感じた。本質的に大事なことを改めて実感した。

  ・エクセルを無理に置き換えない、どのような仕掛けでやっているのか?
    ↓
      ExcelのVBAの「保存」をキーにして、データ取り込む仕組みを作った。
      Accessをクラウド上にアップしておき、エクセルデータをすべて取り込み、AWSクラウド上で最新状況がわかる。
     市販ソフトを活用しているので、担当者交代等の場合でも引継ぎも楽である。
     社内で独学で進めていたが、中途採用のシステム担当者を入れた(外部ベンダーは使っていない)。

  ・IBUKIさんには7年前くらいに、O2松本さんのご紹介で訪問したことがある。
     それからここまで進歩したことに感銘をうけている。
     情報の整理整頓5Sができていないと、ダッシュボードを作ってもこのようにしっかりまとまらない。

  ・以前話を伺った時より進化しているが、やはり5S等の基本を大切にしている
     Excelのように現場が使いやすいツールで実行しているところが良い
     少人数で自作すると手作り感があるが、大手が使っている市販品レベルのUIであるが、秘訣は?
     アイコンのセンスが良い、簡単に真似できないが大切なことである。
     ↓
     デザイン重視で、作る側のモチベーションも上げるようにしている
     現場も、UIがよいと使う頻度が上がる

      Excelを使って開発している件で、どのような開発環境か?
     ↓
      VBAだけで、特別な開発環境はない。

  ・弊社でもほとんど取り組めていない「IT人材の育成」等、少しずつでも自社で取り組んでいきたい

  ・以前伺った時に「現場に寄り添う」レベルが他社と違うと感じていたが、
     これをずっと続けられているのでしょうか?
     現場がわからないと「5Sパトロールシステム」はできないと思う
     ↓
     自分が20年金型の仕事をしていたので、現場をよくわかっている
     現場の人の思いが手に取るようにわかるから。

    でんでんむし、どのように現場に馴染んでいったのか?
     ↓
    現場の意見を小さなことでも取り入れて、利便性を高めてきた。
    これにより現場から改善アイディアがより出るようになった。

    現場からいろいろな要望が上がった時、順番はどのように決めているか?
     ↓
    基本的には「依頼順」
    安全にかかわるものの優先度を上げる場合もある

    * 現物をみてビックリしたのが、樹脂グラス(見た目はガラスっぽいが
           絶対に割れない)であった。

  ・今回センサーを入れた金型を実際にやっているのをみたが、
     どのように開発してきたのか?
     ↓
     市販でセンサーを販売しているが、そのセンサーのどこにいれるか、
     どのようにデータを活用するか で悩んでいる企業は多くあると思う。

     温度・流速・圧力・変位等のセンサーをいれ、実験的に有効性を確認した。
     二点間距離の圧力センサーが有効などの状況がみえてきた。

     同じ良品でも計測結果が違う場合もあり、閾値を超えたら成型機を止めよう のように利用できる。
     解析データの見方や活用方法はさらに研究を重ねたい。 

(5)まとめ

  甲子園で慶應高校が優勝した時に「みんながニコニコしていた」ことが印象的だった。
  私たちの発表事例でも、歯を食いしばるのではなく、楽しみながらやっている印象がある。

  ・システム開発は苦しい仕事だと思い込みがちだったが、創意工夫の延長でシステムを作るようになった。
     できあがった成果が目の前ですぐに見えるのは、楽しい仕事である。
     これに比較して、IT産業のシステム開発は苦しい印象がある。

  ・ユーザー側のシステム開発は「楽しい、創意工夫、成果が見える」ことをアピールして、
     デジタル人材育成を進めていけるのではないか。これを発信していきたい。

  ・働き方改革の中で、「システム開発は楽しい」というアピールを進めていきたい。

 

以上