近年のロボット技術の進歩に伴い,ロボットのアプリケーションも幅広くなってきている.従来のロボットは工場で柵に囲われた中でのみ作業が行える形での運用が行われてきたが,人協働ロボット,サービスロボットの登場により,ロボットと人との距離が近い中での運用が広く行われるようになってきている.こうした中で,ロボットを適切に運用していく上での安全に対する考え方も拡張していく必要が出てきており,リスクアセスメントを行う際にも多様な条件を検討していく必要が出ている.従来のリスクアセスメントの方式のように,シート状でリスク要因とその対策を検討整理していく方法は,確実にリスク要因を潰していくことには大きく寄与していくものの,膨大な資料に目を通す必要があり,専門家以外がリスクアセスメントを行っていくにはハードルが高い.今後,多様なユーザがロボットの運用を安全に行っていく中で,リスクアセスメントプロセスの改善やアセスメント結果を把握しやすい形で示すことは重要な課題と言える.
上記の課題に対して,産業技術総合研究所を中心に視覚的に全体像を捉えやすくするモデリング言語の一つとして,SysMLを拡張した「SafeML」の仕様化が進められてきていたが,仕様として公開はされていない状況であった.しかし,リスク要因の分析とその対策が視覚的に把握しやすくするという方向性はこれからのサービスロボットなど,幅広いロボットの運用時の安全方策を構築していく上で重要であり,こうした仕様を改善し,オープンにしていくことは,現在サービスロボットの開発・販売をしている企業だけでなく,運用するユーザにとっても大きなメリットがある.
そこで,本仕様は産業技術総合研究所で開発が行われたSafeML仕様書1.0を発展させ,広く利用してもらえるようにすることを目的としたものである.ロボットシステムの安全な運用に向けた方策を練る上で本仕様をご活用いただきたい.