■第23回中小AG会合 [2023/3/2(木)]

●議題:
議事 ビデオ
(1)開会挨拶 松島主査
(2)副主査の選任
(3)前回、三田工機(株)取組みの振り返り

(4)(株)樋口製作所様の取組みについて
    (株)樋口製作所 代表取締役社長 樋口徳室氏

   <意見交換>樋口製作所様の取組みについて
(5)まとめ 松島主査

 出席者:
 (株)樋口製作所 樋口様
 松島主査、永森様、今野様、浜野様、林様、兼子様、三田村様、小嶋様、松下様、澤田様、中川様、橋向様、大川様、長戸様、水上様
 小松様、池谷様、丸山様、事務局:中島、益子

 

(1)開会挨拶 

 ・この会の意義は、中小企業の目線で、本音で意見交換することである。

 

(2)副主査の専任

 ・ウインアーク1st株式会社の大川真史様を事務局より推薦し、委員より承認。

 ・副主査 大川様
   松島先生がおっしゃるように、中身があり、今後のアクションにつながるようにしていきたい。

 

(3)前回、三田工作機械様の取組みの振り返り

  ・図面から工程手順を決める事が肝要だが出来る人が限られボトルネックになっている。
   多くの中小製造業共通の課題に向き合って取り組んだ事が素晴らしいと思った。
 ・どんなに素晴らしい技術も社長の中に留まっていると事業継続が難しいので、この取り組みは大変重要である。
 ・若手が入ってAIを使って業務のやり方を変えていったことが、人材不足・採用難という共通的な課題にヒントになると感じた。
 ・実験的な取り組みに対して川崎市が支援していることも素晴らしいと思った。

 

(4)(株)樋口製作所様の取組みについて
  「DXで生産・管理両面の業務改革 ~ブリッジエンジニアが取り組むDXへの挑戦~」

 ・事業
  ・金属プレス部品製造
  ・売上の90%が自動車・二輪車部品関連、エネルギー・インフラ関連
  ・特徴:独創的な絞り加工技術、金型・設計・製造の内製化、自社製省力化設備の設計・製造

 ・デジタル化の取り組み
  ・2018年1月からIoTに取り組み
  ・2025年に自社サービスを外販を目指している

 ・動機
  ・大口顧客との取引が無くなった危機感
  ・社内の多様な情報に横ぐしを通したい
  ・自動車業界で求められる水準でのトレーサビリティは紙では難しい

 ・きっかけ
  ・先輩経営者とランチに行ったらドリンクバーでいろんな味を混ぜて「イノベーション」を起こしていた

 ・進め方
  ・社内の人間を集めて内製で進めた
  ・勤続30年のベテランから新人までがリードして進めてきた。
  ・3年間で政策・実装させた社内オリジナル213に上り、半年前から20個ほど増えた

 ・個別事例
  ・全部門情報共有ダッシュボード:各部門の情報を接続して横断的なチェックもできるようになった
  ・トレーサビリティ:製品1個1IDをつけて材料から出荷までの工程情報トレースをデジタル管理
  ・教育:ヒグトレ(150以上のコンテンツを自社開発したE-learning)でスキルセットを管理
  ・ヒグトレは社外販売も念頭に開発され、多言語対応、教育用動画、技能検定コンテンツも開発
  ・ナレッジナビゲーションシステム(技術伝承):AIを使って3Dモデルから確認するポイントが自動的に出る

 ・成果
  ・社内工程内不具合発生率は3年間で4割ダウン
  ・売上高労務効率は3年間で2割ダウン
  ・一番の成果はブリッジエンジニア以外の社員がデジタル技術を活用した改善案を練るようになったこと

 ・ポイント;ブリッジエンジニア
  ・出来る事:困りごとをちゃんと理解している、情報技術を使って解決できる、試作アプリを高速開発できる
  ・特徴:現場出身、現場との人間関係、新しい学びを恐れない新技術を吸収
  ・3年前に電子工作を楽しそうに始めたが、社内は「使えない」の評価
  ・再度、原点に戻って現場で困っている泥臭いことを聞き始めた
  ・外部で講習を受けたり、教育・教材・学習することを推奨した

  <キーポイント>
  ・出来ると思い込む
  ・やってみる
  ・退路を断つ
  ・DXはただのバズワードであり、会社として勝ち残らないといけない
  ・地元を中心に、製造現場改善、ミニアプリ開発などの受託をするようになった

 

     
     
     

 

<意見交換>

 ・ひとつひとつを深くしっかりやっていると思われるが、どの規模の陣容で行っているのか。
  →基本的には7人のチームで行っている。フリーランスや学生アルバイトの協力してもらっている。例えば外国人の個人事業主への開発をお願いしている。
 ・3Dモデルからの熟練者ノウハウはデータベース構築ができないと難しいのでは?
  →技術伝承システムは社外パートナーの協力を多く貰いながらブリッジエンジニアと一緒に進めてきた。
 ・ブリッジエンジニアを育てるには?
  →他社へ出かけて行って他社の現場で話をする。社長の認識と現場が違う。まず小さな所から始めている。
 ・工作に時間を多く使うことを許容する、現場が楽しくやっている事をほめることはなかなか出来ない。
  →今から16年前にアメリカに進出した時も自分たちで進めてきた。ジャングルを買ったところからスタート。
   もともと失敗を失敗と思っていない文化がもともとある。
 ・ここまで4年で到達したのが驚異的。チェックマスター(Man/Machine/Material/Method=4Mをリンクさせる)が凄い事だと思った。
 ・会社の組織全体としてどのような規模と位置づけになっているか。
  →国内250名。うち70名が間接。うち40名が生技・保全・情報技術。この情報技術7名が中心で行っている。
   ただし社内には多くのクロスファンクションチームが立ち上がっている。
 ・実際の開発を誰(社内・社外)がやるのは、どのように決めているのか。
  →どのような体制で進めたら早いかで決めている。社内の方が早いものは社内で。社外が早いと社外で。
 ・簡単な小さなアプリというが、チェックマスターなどつながるようになっている。
 ・始めた当初から出来るようになったのか。どのような従業員の成長プロセスだったか。
  →生産管理を担当する製造現場未経験だがプログラミング経験者を中心に、関心がある6名が社外勉強会イベント参加などを通じ知見を付けていった。
 ・ブリッジエンジニアの従事度合は?
  →基本的に専属。クロスファンクションチームのリーダーもやったりしている。現場や他部門との人間関係を構築できている。
 ・一番初めに取り組もうと思ったときの体制は?
  →社長自身の決意ではじめた。メンターのような先輩経営者との対話(前述の「ファミレスでのイノベーション」)で決断した。
 ・取り組むテーマの優先度付けは?
  →常時100近くのプロジェクトや要望を抱えている。ブリッジエンジニア達で優先度を決めている。
   経営者としては利益優先でやってほしいとお願いしているが、必ずし社長がやって欲しい事を優先的にやっているわけではない。
   例えば総務から「ルンバを動かすとDXの会社っぽい」と提案がありルンバを走らせている。
 ・協力者を募る方法は?
  →オンラインで一番効果があったのは個人利用のツイッターで声掛けしてきた。
   オフラインだと小学生にものづくりキャリア教育をするNPO法人には1000人の大学生がいるので、そこから協力してもらえる方を見つけてきた。
 ・支援機関への期待は?
  →DXもさることながら、本業の金属加工業自体の支援をしてほしい。特に若い人が製造業に興味を持つような事をやって欲しい。

(5)まとめ

 ・システム人材の内製化がやはり重要である。
 ・RRIとしても人材をテーマに取り組む必要があるのでは。

 

以上