3. IECにおけるスマートマニュファクチャリング関連活動

 

3.1 IEC/SyC SM発足の経緯

SG 8 Industry 4.0 – Smart Manufacturing

  2014年6月、Strategy Group(SG 8)が設置され、スマートマニュファクチャリングの検討が始まった。

■SEG 7 Smart Manufacturing

  2016年6月、SG 8の結論に基づきSystems Evaluation Group(SEG 7)が設置された。

■SyC Smart Manufacturing

  2018年2月、SEG 7の結論に基づきSyC Smart Manufacturingが設置され(第1回総会:2018年11月)、現在に至る。

 

 

3.2 何故、システムアプローチなのか

 スマートマニュファクチャリングの実現には複数の技術が必要であり、これらをシステムとして統合していくことになる。また、組織やドメインの境界を越えた複数のシステム間での協調も必要とされる。そのため、既存の規格では不足する部分や、逆に重複があって調整が必要となる部分が出てきてしまう。IECでは、このような問題を解決するための手法として「システムアプローチ」が必要であるとの結論に達し、Systems Committeeが設置されることとなった。

 

 

3.3 ISO/IECにおけるスマートマニュファクチャリング関係の活動

 図3.1は、ISOならびにIECにおけるスマートマニュファクチャリング関係の活動を表す全体図である。IECのSyC SMと同等の委員会としてISO側にはSMCC(Smart Manufacturing Coordinating Committee)があり、IEC、ISOの中でのTCの情報交換の場となっている。また、IEC/SyC SMとISO/SMCCのジョイントタスクフォースとしてOF 1(SMT2F:Smart Manufacturing Standard Map Task Force)、IEC/TC 65とISO/TC 184のジョイントワーキンググループとしてJWG 21が設置されている。さらにIEC/TC 65の配下にはスマートマニュファクチャリングに関するWG 23が設置されている。

 

 図 3.1 ISO/IECにおけるスマートマニュファクチャリング関係の活動

 

 ■SyC SM/OF 1(Smart Manufacturing Standards Map)

 600を超えると云われるスマートマニュファクチャリングに関する規格を、どのように見せるかまたどのようにマップするか、という軸を定義し、規格が重複している領域や規格が抜けている領域を可視化する仕組みの構築を進めている。

 

図 3.2 Smart Manufacturing Standards Map(SyC SM/OF 1)

 

 ■JWG 21(Smart Manufacturing Reference Models)

 スマートマニュファクチャリングの領域で提案されている様々なリファレンスモデルについて、メタモデルによりモデルの記述の仕方やモデル提案の背景、モデルの使い方などの整理を行い、その知見をもとにUnified reference model for smart manufacturingの規格作成を行っている。

 

図 3.3 Smart Manufacturing Reference Model

 

 

3.4 SyC SMの構成とWGの役割

 SyC SMの議長はドイツ、幹事国は米国が務めている。WGには、議長の活動を助ける諮問委員会であるCAG1(Chair’s Advisory Group)の他、以下のWGが設置されている。

 

■WG 1:Use Cases & Supporting IT Tools

 –Facilitate the collection, storage and distribution of SM use cases

■WG 2:Terminology

 –Facilitate the coordination and publication of terminology used within SM deliverables

■WG 3:Navigation Tools for SyC SM

 –Facilitate the coordination and development of supporting IT tools which will enable access to related use cases, standards and architectures within SM

■AG 1:Marketing, Outreach and Communication

 –Facilitate to implement the tasks outlined in SyC SM/AhG 1/ 023-R1 meeting Report (bidirectional communication to/from relevant entities)

■AhG 5:SRG Review

 –Develop SyC SM response to the proposed SMB review of terms of reference

 –Develop SyC SM response to SMB masterplan implementation TF on subject of mapping tools

■OF 1:Smart Manufacturing Standards Map (SM2TF)

 –Define a business case to publish the content of the Standards Map according to this concept

 –Provide a recommendation to ISO/TMB and IEC/SMB to support the realization and maintenance of the Standards Map project

 

 

3.5 WG 3(Navigation Tools for SyC SM)

 WG 3は、SyC SM設立前の2017年に日本がIEC/SEG 7に提案した取り組みが発展したものであり、日本がコンビナを務めている。WG3の役割は3.4項に記載の通りで、図3.4に示すナビゲーションツールの議論が進められている。ナビゲーションツールは、ある特定のモデルに注目した際に(Canvas)、規格の開発者や実際の使用者を対象として、その領域にどのようなユースケースが含まれるか(Use-case)、そのユースケースでどのような機能が実現されるか(Function)、機能間でどのようなデータが交換されるか(Data)、といったことが見える仕組みである。WG3は、非常に広く、また非常に複雑な範囲に及ぶスマートマニュファクチャリングを分かりやすく見せるためのツールを提供することを使命としているのである。

 

図 3.4 Navigation Tool(WG3)

 

 

3.6 SyC SMにおける成果物の関係

  SyC SMで期待される成果物は、ナビゲーションツールを中心として各WG、TFの活動の連携により形作られる(図3.5)。ナビゲーションツールのCanvasで、JWG 21の成果物であるリファレンスモデルを選択し、そのモデルの使いたい場所を選択すると、Use-caseでWG 1の成果物であるリポジトリからユースケースを探すことができる。そのユースケースで使われている規格について、Function、Dataにて、OF 1の成果物であるスタンダードマップからどこに何があるかを検索することができる。さらに、システム全体のベースとしてWG 2の成果物であるターミノロジー(用語)がある。

 

 

図 3.5 SyC SMにおける成果物の関係

 

 

【参考資料】

スマートマニュファクチャリング国際標準化フォーラム2020

Speech 2 「Smart Manufacturing実現に向けたシステムアプローチ」(小田 信二氏)講演資料

 

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